Q能力が満たない場合でも求人票記載の金額を支払わないといけないのか?
A労働者の合意があれば大丈夫です。しかし、不利益の程度が多い場合は、労働者にその不利益の内容や程度を話さなければなりません。加えて、合意書を取り、賃金減額の計算方法や減額に至ったプロセスや理由を説明しなければならない。(山梨県民信用組合判例)また、労使トラブルにならないために、求人票に「能力の程度に応じて賃金額も変動する」旨の記載してください。労働契約時にも、改めて従業員にその旨が記載された労働条件通知書を渡し、説明をしましょう。
Q休職復帰時の能力低下に応じ、人事考課により賃金を減らせるのか?
A最初に、人事考課による減給の基本的な流れについてご説明します。就業規則に予め明記(どのような場合にどのくらい減給するかなど)し、事実確認(能力不足などが見られるか)をし、注意、指導、改善を促す。そして、減給が妥当かどうかを慎重に判断し、就業規則に沿った手続きをする。
就業規則に「休職復帰時の能力低下に応じ、人事考課により賃金を減額する」旨明記していない場合、従業員の合意を得た上で、上記の流れで行ってください。
次に、前記の「人事考課による減給の基本的な流れ」に留意しつつ、復帰後の能力不足を理由に減給する場合についてご説明します。ここで、アメックス事件という最高裁判例について触れます。当事件は復職を拒否する案件でしたが、事例が似ているので参考にしてください。裁判官は「復職に対して会社の勝手な判断はXの復職を著しく困難にする不合理なもので権利濫用したものというべき。休職期間満了前の復職の可否の判断の際にXの主治医に紹介し、Xの承諾を受けて、Xの主治医が作成した診療録の提供を受けて、Yの指定医の診断も踏まえて、本件診断書の内容を吟味することが可能」と判示しました。つまり、復職後に能力が低下し、減給する場合は、診断書も人事考課の材料に入れ、上記の人事考課による減給の基本的な流れで減給する必要があると思われます。
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