【A社事件(東京高等裁判所.令五年四月二七日判決)は、元チームリーダーの女性従業員が育休取得後に復職したところ、職務等級は維持されたものの、部下のいないマネージャーに配置され、男女雇用機会均等法および育児介護休業法等の違反だとして、損害賠償を求めて提訴した事案である。東京高裁は均等法および育介法が禁止する「不利益な取り扱い」に当たるとし、違法との判断を下した。】
東京高裁は「経済的な不利益を伴わない配置の変更であっても、業務の内容面において労働者に不利益をもたらす処遇は、均等法および育介法の禁止する取扱いに当たる」という判断を示し、「基本給や手当等の経済的な不利益を伴わない配置の変更でも、業務内容の質が著しく低下し、将来のキャリア形成に影響を及ぼしかねないものは、労働者に不利な影響をもたらす処遇に当たる」としている。
ただし、当該労働者が自由な意思に基づいて人事措置を承諾したと認められる場合、またはその業務上の必要性の内容や程度および有利また不利な影響の内容に照らして、均等法や育介法の趣旨・目的に実質的に反しない特段の事情がある場合、同各規定の禁止する取扱いに当たらないとしている。
その上で、「本件措置は、本件従業員の妊娠、出産、育児休業等を理由とするものであり、本件従業員が自由な意思に基づいて承諾したものではなく、業務上の必要性が高くなかったので、均等法または育介法の禁止する措置に当たる」としている。
本件従業員が復職後に就いたアカウントマネージャーは、妊娠前のチームリーダーと比較すると「業務の内容の質が著しく低下し、妊娠前まで実績を積み重ねてきた本件従業員のキャリア形成に配慮せず、これを損なうものであった」と述べている。
参考文献:厚生労働省公認労政協労管ニュース.二〇二四年.三月号。
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