会社情報の漏洩行為は懲戒解雇の事由に当たる③

お知らせ

 転職先での利用目的の情報の持出行為は、就業規則の秘密保持義務に違反する。

 S社事件.東京地方裁判所.令和五年五月二四判決

 本件は、不動産売買を目的とする会社の元従業員が、会社の営業秘密を複製、漏洩したこと等を理由として、懲戒解雇され、元従業員が会社に対して賞与、退職金などを請求した事案です。東京地裁は元従業員のデータ持出行為は転職先で利用する目的があり、自らまたは転職先の利益を図ろうとしたものであり、また、機密保持義務に違反し、懲戒事由に該当し、退職金の請求を棄却した。

 元従業員が虚偽説明をしたことを踏まえ「本件持出行為などが発覚しても虚偽の説明を行い、また、メールを削除するなどして、元従業員の行為が発覚しないように証拠隠滅を行っているのであって、懲戒事由が発覚した後の元従業員の対応も誠実なものとはいえない」としている。

 こうした事情からすると「本件持出行為によって現に競合他社等に情報が漏洩した事実までは認められないこと、元従業員が一定の範囲で会社の調査に協力していること等の元従業員に有利な事情を踏まえても、会社が懲戒解雇を選択したことは相当が有る」と述べている。

 その上で「元従業員に対する懲戒解雇は有効であり、元従業員の懲戒事由に該当する行為は、これまでの功労報償を完全に減殺する悪質な行為であるから、元従業員は退職金規定に基づき、退職金を請求することはできない」と棄却した。

厚生労働省公認.労政協労管ニュース六月号.二〇二四年.三頁。

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