【学問】民法物権法【法学】②

学問

序論

抵当権と質権および、民法典に規定がない譲渡担保権の異同について、本論文では、各々の特色を比較しながら述べていく。各々の権利設定や権利の実行段階でどのような異同があるのか、そしてなぜ非典型担保である譲渡担保が存在するのか。この問いを本論の指針とし、これに解答すべく本論を展開する。

本論

第一節:意義

抵当権と質権は、設定契約によってはじめて成立する「約定担保物権」である。譲渡担保権は、民法その他の法律に定められた担保方法ではない、変則的な担保方法である「非典型担保」である。また、抵当権と譲渡担保権は、目的物の占有を債権者に移転しない「非占有担保物権」である。質権は、質権は目的物の占有を債権者に移転する。

第二節:機能

抵当権は、登記制度のある特定の財産についてしか設定できない(公示・特定の原則)。質権と譲渡担保権は譲渡できないものでない限り、動産や不動産の他、権利にも設定することができる(ただし、特別法により、登記・登録制度が完備され抵当権の設定が可能になっている動産については、質権の設定が禁止されている。)。

第三節:設定契約

抵当権と譲渡担保権は、諾成・不要式の契約。質権は、動産と不動産質権は要物契約であり、債権に対する質権は特別な要件は無い。

対抗要件について、抵当権と不動産質権、不動産を目的とする譲渡担保権は登記。動産質権は目的物を継続して占有すること。債権質は設定者による第三債務者への通知か、第三債務者の承諾が必要であり、第三債務者以外の第三者に対抗するには、確定日付のある証書、動産を目的とする譲渡担保権は引渡しである。被担保債権では、債権を目的とする場合は、第三債務者への確定日付のある通知、または、第三債務者からの確定日付のある承諾である。  

被担保債権については、三つの権利とも種類に制限はないが、動産質権や動産を目的とする譲渡担保権等の範囲はやや広く認められているとされるなど多少の違いはある。

第四節:権利の実行

抵当権、不動産質権の実行とは、被担保債権が不履行となった場合に、抵当権者自らが主導して、目的物を換価処分し、あるいは目的物から生じる収益を収取することによって、優先弁済権を実現することをいう。動産質権の実行には、競売によるもののほか、簡易な弁済充当の方法もある。債権質の優先弁済権実現の方法は、民事執行法上の債権執行の手続によることももちろん可能であるが、質権者には直接取立権も認められている。譲渡担保権は、譲渡担保権者が目的物の所有権を、代物弁済として、確定的に取得する方法であり、帰属型という。また、譲渡担保権者が目的物を売却し、その代金から弁済を受ける方法であり、処分型という。

第五節 譲渡担保権の存在理由

 譲渡担保権はなぜ存在しているのかについて、抵当権と質権のメリット、デメリットについて触れながら論じていく。質権は動産を担保にすることができる。しかし、債務者は債権者に動産を引渡す必要がある。つまり、債務者はその動産を使用しながら担保を設定することができず、債権者はその動産の善管注意義務を負わなければならない。一方、抵当権は債権者に引き渡すことなく不動産を担保にすることができる。債務者は弁済前であってもその不動産を使用し続けられることができるが、動産を担保にすることができない。譲渡担保権は質権や抵当権のデメリットを解消するような担保契約でもあり、具体的には担保設定時に債務者が債権者に動産を引渡す必要がないため弁済前の期間も債務者がその動産を使用することができ、加えて債権者は善管注意義務を負わない担保契約を譲渡担保権は実現することができた。

結論

本論で明らかになった各権利特色の6つの共通点について述べる。①抵当権と質権は約定担保物権である。②抵当権と譲渡担保権は、非占有担保物権、諾成・不要式の契約。③質権と譲渡担保権は譲渡できないものでない限り、動産や不動産の他、権利にも設定することができる。④抵当権と質権、譲渡担保権は、被担保債権とも種類に制限はない(動産質権や動産を目的とする譲渡担保権等の範囲はやや広く認められているとされるなど多少の違いはある。)。⑤対抗要件について、抵当権と不動産質権、不動産を目的とする譲渡担保権は登記。⑥抵当権、不動産質権の実行は、被担保債権が不履行となった場合に、抵当権者自らが主導して、目的物を換価処分し、あるいは目的物から生じる収益を収取することによって、優先弁済権を実現する。

 これらの共通点以外の点に関しては、各々異なる特色を持つということになる。抵当権特有の性質は、抵当権を設定できる目的物は不動産などの登記設定ができる特定の物に限られ許容範囲が狭く、実行に関しても優先弁済的効力しか持たない点である。質権特有の性質は、目的物の占有を債権者に移転させ、留置的効力を持つという点である。譲渡担保権特有の性質は、民法に規定されていない非典型担保であり、実行方法に関しては換価処分等の手続を取らず直接取立によるものであること。最後に、全体を俯瞰して見ると対抗要件や実行方法は各々特色が分かれており、不動産質権や不動産を目的とする譲渡担保権の性質は抵当権の性質と類似していると結論付ける。

参考文献

潮見佳男・道垣内弘人編.『判例百選民法Ⅰ』.第8版.2018.有斐閣.212p

池田真郎編集.『法学六法‘21』.2020.信山社.628p

佐久間毅一箸. 『民法の基礎2物権』.第2版.2019.有斐閣.331p

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