【上智大学法学】外国人受け入れの現状と新制度への期待③(育成就労制度)

お知らせ

 多くの「失敗」事例が示唆するのは、外国人と国民が国内の労働市場で競合している状況を改善すべく、とりわけ「国民(ネイティブ)の側」を支援する政策を国家が持ち得ていなかった、という事実である。

 そして、労働組合は本来であればネイティブ労働者の待遇改善に向けて動くべきところ、外国人労働者の人権保護にも無頓着ではいられないというディレンマに陥った結果、政治へのロビーイング・パワーを有効に発揮できていない。

 他方で、雇用者側は、グローバル・サプライチェーンを構築し、より安価な労働力を(国境を超えて)確保するというビジネス成長モデルから抜け出せなくなっている。

 そして、政府は、国内に有力企業をとどめておくにはそれらのビジネスモデルを尊重せざるを得ない。

 このような関係性の中では、既成政党や政権が雇用者寄りの政策に終始し、ネイティブ労働者を代表する政治団体が不在になるか、もしくはその影響力が極小化する。

 そして、ネイティブは、外国人との間でいわばゼロ=サム状態を余儀なくされ、労働市場において厳しい競争を強いられているにもかかわらず、外国人の保護をうたうリベラル・デモクラシーの正当性の前に、代替する選択肢を見つけられずにいる。

 このような政治的構造の欠陥を突くように右派、左派両派のポピュリストが台頭し、選挙民の支持を拡大している。

参考文献:上智大学法学部国際関係法学科教授岡部みどり著「月刊社労士2月号」2024年.社会保険労務士連合会.50-51頁。

コメント

タイトルとURLをコピーしました